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コロナワクチンやHPVワクチンなど、日本でも毛嫌いされているワクチンは色々とありますが、それをなんとかするために何が必要なのか、まずは評価から。
抄録
定義・現状
Vaccine hesitancyは「予防接種サービスが利用できるにもかかわらず,予防接種の受 け入れの遅れや拒否が起こること」と定義され,日本ではワクチン躊躇やワクチン忌避と呼ば れている。近年,ワクチン躊躇は世界的な問題となっており,世界保健機関(WHO)は2022 年に世界の小児予防接種率に過去30年間で最大の持続的減少がみられていることを報告した。 また,日本においても新型コロナワクチンの接種控えやヒトパピローマウイルスワクチンの普 及などは社会問題になっている。そこで本総説では,ワクチン躊躇に関するこれまでの研究を 整理して概説する。
関連要因
ワクチン躊躇には様々な要因が影響するが代表的なものとして,ワクチンや政府関係機 関への信頼(Conˆdence),個人が認識している罹患可能性・疾病危険性(Complacency),予 防接種の物理的・心理的利便性(Convenience)の 3 つからなるワクチン躊躇の 3Cs がある。 社会人口統計学的要因とワクチン躊躇の関連に注目した研究も増えており,年齢,性別,社会 経済的地位,人種,ソーシャル・キャピタルなどがワクチン躊躇に関連することが報告されて いる。また,近年では予防接種に特有で修正可能な要因に注目した「予防接種の行動的・社会 的促進要因フレームワーク」が WHO によって開発され,対策を検討する際のモデルとして の活用が期待される。
評価方法
ワクチン躊躇とその要因の評価方法として,様々な尺度が開発されているが尺度によっ て評価項目,妥当性,信頼性,日本語質問票の有無などが異なり,調査目的に合わせて適切な ものを選択する必要がある。代表的な尺度の一つの 7C scale は,日本語版を含む十か国語以 上の翻訳版が公開されており国際的に広く使用されている。
対策
ワクチン躊躇への対策や介入策についても欧米を中心に様々な研究やガイダンスが報告され ている。エビデンスに基づいた対策は大まかに,1. 行動科学に基づいた予防接種システムの 強化,2. 組織的なモニタリングによるテーラーメイドなアプローチの実施,3. 医療従事者を 支援するためのエビデンスに基づいたリソースの提供,4. メディアの活用・情報発信,に分 けられる。これらの知見を踏まえて,日本においても,様々な側面から接種率向上に向けたア プローチを実施することが期待される。
ポイント
ワクチン躊躇(vaccine hesitancy)の3Cs, 5Cs, 7Csモデル
ワクチン躊躇に影響を与える主な要因
・ワクチンや政府関係機関への信頼(Confidence:信頼)
・認識されている疾病危険性(Complacency:無頓着,あるいは自己満足)
・予防接種の物理的・心理的利便性 (Convenience:利便性)
3Csに加えて
・予防接種の個人的なコストとベネフィットの重み付けの度合い(Calculation)
・他人を守り感染症をなくそうとする意志(Collective responsibility)
5Csに加えて
・接種状況を社会的に監視することへの考え(Compliance)
・陰謀論に対する考え(Conspiracy)
予防接種の行動的・社会的促進要因フレームワーク
予防接種率向上への4つのアプローチ